マンガ版『悪女は砂時計をひっくり返す』の89話のネタバレと感想です。
前回はアリアとアースの幼少期が描かれましたね。そして今回は、再び現在のストーリーに戻ります。イシースが断罪された後どうなったのか、続きを見てみましょう。
目次
姉が処刑された現実を、オスカーは直視できずにいた
イシースの処刑後
「父が生前に望んだのは、私の首だったはずなのに。運命とは本当に分からないものだな、公女」
アースはそう言いながら、切断されたイシースの首を持ち上げます。その首を高々と掲げると、広場にいた民衆からワッと歓声が上がりますがーーー
オスカーだけは下を向き、震えながら涙を耐えていました。
彼はすべて終わらせたいと願っていて、姉が処刑されることも予想していました。けれど、どうしてもその事実に向き合うことができないのです。
(姉が父のようになっていくのを、これ以上見たくなかった。弱者を害して、アリアお嬢様のことも泣かせたじゃないか)
オスカーは以前アリアに泣きつかれた時、その非力な姿を見て自分自身と重ねました。アリアのことを、自分と同じで何もできない非力な存在だと思っていたのです。
しかしその時、オスカーはふと上座にいるアリアを見ます。そして彼女の堂々とした姿を見て、ようやく我に返りました。
(僕は今、何を考えた?アリアお嬢様が…僕みたいに…かわいそうだと思った?)
そして彼はようやく気づきます。
何もせずにただ見ていたのは、自分だけだったのだと。あの高みにいる令嬢をかわいそうだと言いながら、傲慢に振舞っていたのではないかと。
オスカーは全て失って初めて、自分もただの平凡な貴族に過ぎなかったのだと悟りました。
クロイの話を聞くため、アリアたちは屋敷へと移動する
クロイの話を聞こう
騎士たちに連れられて去って行くオスカー。その背中を見てアリアは思いました。
(なんだか後ろ姿が身軽に見えるね。もう会うことはないでしょうけど)
するとその時。
隣にいたローハンがぱんっと手を叩き、全て終わったようだから行きましょうか!とみんなを促します。
というのも今から、アリアの実父・クロイの話を聞かなければなりません。
そして話を振られたクロイ本人は、いよいよ話をする時が来ましたね…と神妙な面持ちで答えました。
・・・
アリアたちが移動しようとした時、ミエールがアリアの元に駆け寄って来ます。
「お姉様!私も連れて行ってください!」
ニコニコと話しかけるミエール。しかしアリアは返事をせず、無視してその場を去ってしまいます。
その態度にミエールは愕然としました。
アリアはついに出自を知る
一同は話をするため、アリアの屋敷に向かいます。そして屋敷に到着すると、クロイは豪華な調度品を見て安心しました。
「よかった、カリンが元気に暮らしてるみたいで。本当によかった」
彼は再会した日から、ずっとそう言い続けています。そのためカリンは呆れますが、文句を言いながらも喜んでいるのは明らか。
クロイとカリンは新婚夫婦のような相思相愛っぷりです。
そして全員が席につくと、カリンは事の次第――クロイがアリアの実父であり、ピアスト侯爵家の長男であることを説明します。
またこの時ローハンは、今回の件でどれだけ自分が奔走したのかを力説しました。
血のつながった家族
今まで音沙汰のなかった実父が現れたことに、少々疑惑を持っていたアリア。しかし母親とロハンの話を聞き、ひとまず問題は無さそうだと判断します。
するとクロイは、申し訳なさそうに言いました。
「カリンを連れて行く約束だったけど…いくら私でも、こんな形で来てそんな事は言えないし…今さらカリンと一緒になりたいなんて、あまりにも欲張りだから···」
子犬のように落ち込むクロイに、カリンは頬を赤らめながら怒鳴ります。
「まったく!こんなに気が弱いなんて!言いたいことはちゃんと言いなさいって!」
さらにカリンだけでなく、ロハンまで口を挟みます。
「そうだよクロイ!約束は守らないと!一緒にクロア王国に来てくれとプロポーズしなきゃ!もちろん、アリアお嬢様も一緒にね」
ロハンがしれっとアリアを連れて行こうとするので、アースは激怒します。
当事者であるアリアを置き去りにして、あっちこっちで大騒ぎ。もはや話し合いをする状況ではありません。
そんな中アリアは、1人静かにお茶を飲みながら思いました。
(血がつながった家族だから、少し…気になるわね…)
ミエールのもとに『保護者』がやって来る
ミエール視点
その頃、監獄の一室ではミエールが膝を抱えていました。アリアに無視されたうえ迎えも来ないので、騙されたのでは…と不安になったのです。
するとその時、部屋の扉がガチャリと開きます。
「残念ですが、待っている方は来ませんよ。私がミエールお嬢様の保護者ですから!」
そう告げたのは、見慣れた赤髪。アリアの侍女・アニーでした。
補足|アースの幼少期の記憶について
解説ではカットしましたが、今回の89話では冒頭にアースの独白があります。
アースの独白によれば、彼は幼少期にアリアと出会ったことを忘れているようです。
誰かを守ろうとしたことも、生き残ろうと望んだことも覚えています。しかしその相手が誰だったのか、いくら頑張っても思い出せなかったのです。
『悪女は砂時計をひっくり返す』89話のネタバレと感想
ネタバレ感想|オスカーの罪について
というワケで今回を以って、オスカーも退場しました。アースの最大の敵だった公爵家が全滅です。
オスカーは基本的に善人ですが、最終的には「何もできなかった男」という面が強調されていたように思えます。
貴族派の中で1人だけ裏切らなかった青年と言えば聞こえはいいものの、結局のところ彼はずっと傍観者でした。
姉・イシースの言いなりになって、止める事もせずにただ周囲の悪事を見ていただけ。そして姉を亡くした後も現実を直視できず、最終的には辺境の村へと連れて行かれました。
オスカーは悪事を働いていないので、この末路は少し可哀想な気もしますが・・・
いくら善人だろうと行動せずにいるのは罪という、作者様からのメッセージなのかなと思いました。