【ついてくるもの】考察・ネタバレあり|雛人形の正体とは?日本の生贄文化が元ネタか

考察と書籍

『ついてくるもの』は三津田信三のホラー短編小説です。本作では呪われた雛人形が主人公に憑りつきますが、一体彼らは何者なのでしょうか?

本記事では『ついてくるもの』について日本の生贄文化をベースに考察しました。なお作品のネタバレを含むので未読の方はご注意ください。

ついてくるもの|あらすじと結末のネタバレ

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BOOK☆WALKER4.9/5

あらすじ

この物語の主人公はとある女子高生。

彼女は学校の帰り道、廃屋の裏庭で雛飾りを見つける。雛人形は片目・片腕・片足が傷つけられていたが、お姫様だけが無傷だったので助けなければと思って自宅に持ち帰るが……

それ以降、主人公の周囲では謎の死が相次ぐ。彼女はお姫様が原因だと気付き何度も捨てに行くが、なぜか必ず戻ってきてしまう。

結末ネタバレ

『ついてくるもの』のネタバレを読みたい人は、以下のボタンをタップしてください。

ただしこの物語はとても面白いので、できれば書籍を購入するか借りるかして実際に読むことをオススメします。

主人公は無自覚だが、実はお姫様を拾ったその日から憑りつかれていて度々意識を乗っ取られていた。何度捨てても戻ってくるのは、乗っ取られている最中に主人公が自分で拾いに行って持ち帰っていたから。

考察|お姫様と14体の雛人形の正体は?生贄文化をもとに考える

考察①お姫様の正体は?

まずは『ついてくるもの』に登場するお姫様について。なお考察するにあたり作中で判明している情報を以下にまとめました。

お姫様について
  • 『憑き物』の一種だがその正体は不明
  • 主人公によれば、お姫様は『非常に気品の漂う容姿』をしている
  • お姫様に関わった者は、片目・片腕・片足を負傷する(命を落とすケースが多い)
  • ただしお姫様を遠ざければ被害は免れる
  • 憑りつかれた主人公は、最後に自分で片目・片腕・片足を潰した
  • つまりお姫様は最終的に、宿主の意識を完全に乗っ取る
  • 本編の言葉をそのまま使うなら、お姫様はいまや主人公自身なのだ
  • なお主人公は、件の雛人形の『語り部』となる

このお姫様が何者なのか、結局最後まで謎のままです。憑き物の一種だと思われますが、あまりに情報が少ないので正体は分かりません。

『ついてくるもの』の冒頭では憑き物信仰について説明されていますが、以下のように説明されていることから作者自身もお姫様が結局何者なのか知らないのかもしれません。

「当初は正体不明だった憑き物が、その体系化も容易ではないほどの存在へと変貌を遂げてしまった。もしかすると新たなものへと進化した可能性すらある」
引用元:ついてくるものP35/三津田信三

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考察②お姫様の目的

さらに言えばお姫様に何かが憑りついていたのか、それともお姫様自体が邪悪なものだったのかすら不明です。

ただし物語全体を見るに、このお姫様からは自尊心の高さを感じます。気位が高いとでも言うのでしょうか。

主人公には『気品の漂う容姿』と評されており、また語り部を欲するあたり自分の武勇伝?偉業?を広めたいようにも見えます。

何にせよ宿主の意識を乗っ取ったり人を呪ったりできるあたり、かなり力のある存在なのでしょう。

考察③14体の雛人形について

次にお姫様を除く14体の雛人形について。彼らに関しては『ついてくるもの』の作中で以下の情報が判明しています。

14体の雛人形について
  • 14体全員が片目・片腕・片足を潰されている
  • とても邪悪な視線をお姫様に向けている(ただしこれは主人公の主観)
  • 主人公曰く、人形たちはお姫様に対して『自分たちと同じ目に遭わせたいと願い、その機会を密かに伺っている』ように見えたとの事
  • 主人公の夢に出てきた真っ黒な人影も、この人形たちだと思われる
  • ただし真っ黒な人影は、犠牲者が出るごとに減っていく

人形たちはどれも体の片方が欠損していますが、この設定を読んだとき管理人の頭にはある言葉がよぎりました。

生贄(イケニエ)です。

一説によればその昔、神様に生贄として捧げられた人は片目・片足を潰される風習があったそう。生贄だと分かりやすいように目印を付けられたのです。

これは14体の人形たちと同じですよね?

なお一つ目小僧なども生贄がモチーフではないかという説があります(ただし諸説あり)

そのため管理人は『ついてくるもの』を読んだ時、14体の雛人形=お姫様に捧げられた生贄ではないかと考察しました。

解釈|この恐ろしい物語をどう読み解くべきか?

解釈①お姫様の暴走パターン

最後にこの物語全体について管理人なりの解釈をまとめました。

考察①お姫様の暴走
  • お姫様は定期的に一定数の生贄(イケニエ)を要求する
  • ゆえに14体の雛人形たちは生贄にされた。昔はそれでお姫様を抑えることができた
  • しかし今はお姫様がパワーアップし、相当数の生き物を要求するようになった

ひな祭りは本来、厄払いのための儀式だったと考えられます。

ゆえに14体の雛人形たちは、お姫様を抑えるための生贄として捧げられた。昔話によくある解釈を当てはめるなら、このような筋書きになるのかなと思います。

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考察②雛人形全体が邪悪なものである

しかし『ついてくるもの』の作中で以下のように表現されていることから、単なる生贄ではなく雛人形全体が邪悪な存在であると考えるべきかもしれません。

『あの家の裏に飾られたあの雛人形が、そんな役割を負わされていたとは限らない。だが、あの状態はどう見ても異常だった。あれには何か良からぬ意味が込められていたのではないか』
引用元:ついてくるものP47

『まるで何人もの小人がさ、僕の片手と片足にしがみついてるみたい…』
引用元:ついてくるものP50

とりわけ主人公の直感を信じるなら、以下のような解釈もできるでしょう。

考察②呪われた雛人形
  • もともと雛人形全体が邪悪なものだった。もしくは邪悪な儀式に使用された
  • その中でもひときわ強力な存在だったお姫様が、他の人形たちを犠牲にして力を蓄えた
  • つまり他の人形たちはお姫様の生贄にされた。その際に体の片方を傷つけられた

雛人形はお雛様を恨んでいる。だから邪悪な目で見ていたし、主人公がお雛様に憑りつかれた後は主人公=お雛様と見なし、追いかけてその周辺人物を無差別に攻撃した。

このような解釈もできるのかなと思います。

ただし結局のところ『ついてくるもの』の解釈は語り手の主観をどこまで信じるかで変わってきます。

それこそ主人公が最初に感じた「14体の人形がお姫様を邪悪な目で見ている」という直感自体が間違いであれば、上記の解釈は覆されるワケですから。

まとめ|新たなものに進化した憑き物

体系化すらできない憑き物

いろいろな解釈が考えられますが、結局のところお姫様ーーーいえ、この雛人形たちの正体は不明です。考えれば考えるほど分からなくなります。

相手がどのような存在でどんな目的を持っているのか。それらが一切分からず、さらに過失のない人々が犠牲者となる。

その理不尽さと意味の分からなさが『ついてくるもの』の恐ろしさなのでしょう。

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