『ウーユリーフの処方箋』のストーリーを解説する記事です。
エンディングまで全て読んだけど腑に落ちない点がある…という人向けに、要点をザックリまとめました。とくに以下の5点について書いています。
- 『ウーユリーフの処方箋』の真相
- 『ヒールユー・プロジェクト』が始動するまでの経緯
- マツリの行動に隠された伏線
- 7章における謎の選択肢は何だったのか?
- このゲームは、結局何が言いたいのか?
ネタバレ満載なので、本編クリア後に読むことを推奨します。
なお本記事のタイトルは『解説』となっていますが、公式ではなく個人による考察記事なのであしからず。
目次
『ウーユリーフの処方箋』のエンディングについて解説
『ウーユリーフの処方箋』は円果を癒すためのゲーム
主人公・マツリが迷い込んだのは、呪いの乙女ゲーム『ウーユリーフの処方箋』の世界。そしてこの世界では、化け物になったヒロインが次々と男を食い荒らしています。
まずこの世界が何なのかというと、これは『ヒールユー・プロジェクト』の制作陣が作り出したゲームの世界。
つまり『ウーユリーフの処方箋』とは、円果を癒すために作られた虚構の世界です。
マツリを『律円果』に戻すために用意したゲームであり、呪いでも都市伝説でもありません。
なおゲーム6章にてウーユリーフが「大丈夫。これは処方箋。みんなあなたの味方です」と言っていましたが、このセリフはまさしく伏線ですね。
関連:『ウーユリーフの処方箋』ネタバレ解説①ヒロインとンアウフの正体
ヒールユー・プロジェクトが始動するまでの経緯
円果は『飛び降り事件』のせいで、周囲から散々バッシングされました。
誹謗中傷の手紙がたくさん送られ、自身のファンからも罵られる始末。中には励ましの手紙もありましたが、それすらも円果を傷つける要因だったのかもしれません。
この状況に耐えられなくなった円果は、ゲームの世界へと逃げ込みます。
そして自分のことを『マツリ』だと思い込み、ほぼ1日中ゲームをプレイして廃人になります。それこそ日常生活に支障が出るほど、人間としてアウトな状態。
円果は壊れてしまったのです。
そしてこの状況に焦ったのが更紗社長。円果が所属する事務所の社長です。事務所には円果しか稼ぎ頭がいないので、彼女はとても困ります。
だから更紗社長は三筒プロデューサーと組んで、どうにか円果を現実世界に連れ戻そうとします。
この計画こそが『ヒールユー・プロジェクト』だったのです。
ラスト・レジェンドの参加者はメインキャラ5人のモデル
メインキャラ5人の対応表
マツリが現実だと思っていた世界はフィクションであり、『ラスト・レジェンド』の世界こそが現実です。
そして『ラスト・レジェンド』の参加者5人は、『ウーユリーフの処方箋』のメインキャラ5人とそれぞれ連動しています。
具体的には『ラスト・レジェンド』の参加者をモデルとして作られたのが『ウーユリーフの処方箋』のあの5人です。
なお各キャラのポジションは以下のとおり。
- 円果=マツリ
- 友喜=キリオ
- 圭=ノゾミ
- 乃万=カナタ
- 和歌=ミト
上記5キャラについては、ゲーム内で退場した順番と『ラスト・レジェンド』で脱落した順番が同じです。
最初にヒロインに食べられたカナタは『ラスト・レジェンド』でも最初に退場する…というように、2つの世界はきっちり連動しています。
マツリはなぜ円果に戻れたのか?ゲームに隠された伏線
『マツリ』になり損ねた円果
円果はゲームの世界に引きこもり、マツリとして女遊びを繰り返していました。
けれど完全な別人になれるはずもなく、マツリは度々『円果』に戻っています。例えば序盤で1人きりになるシーンでは「オレは1人じゃ何もできないんだった」とパニックになり、内気な円果が顔を出しています。
マツリは『イケメンで何でもできる男』という設定なのに、1人になると蹲っていたのはそのせいですね。
また後半でも、円果の記憶がちょいちょい顔を出していました。そのシーンがこちら↓
ンアウフ「寂しいケド…それがマツリくんの夢なら応援するヨ」
ミーハーが俺の膝にしがみつく。しかし、すぐ離れた。
ンアウフ「僕ね、好きな人の足を引っ張りたくないンダ」
マツリ「ミーハー…」
ンアウフ「僕、マツリくん推しダカラ」
わからない。どうしてか。ミーハーの言葉に鼻の奥が痛くなる。泣きそうだ。引用元:STAGE06・9/ミーハー
最後の一文で、アイドルとしての円果がぶり返していますね。結局のところ彼は、ファンのことを忘れられないのです。
こうしてマツリは、本編中に何度も円果に戻りかけていました。そして、とあるシーンで完全に円果に戻ります。
7章15話『はじまり』でキリオが飛び降りたシーン。これが引き金になって、自分のことも友喜のことも完全に思い出しました。
7章における謎の選択肢について
7章でマツリとキリオが屋上から落下したとき、マツリはひどく動揺して自分を責めます。もし時間を巻き戻せるならやり直したいと願っていました。
マツリ「(どうしよう…どうしよう!!俺のせいだ!!)
俺がもっと素早く彼の腕をつかんでいたら、こんな事にはならなかったのに!
マツリ「(時間を巻き戻せるなら…もう1度やり直せるなら!!)」引用元:STAGE07・16/扉
しかしこの直後。
画面に『GEMEOVER』の文字が出て、ゲームをやり直すかどうかの選択肢が出ますがーーーマツリは『いいえ』を選びます。
この流れ、ものすごく不自然ですよね。プレイ中に「あれ?何で?」と思った人も多いでしょう。
しかし結論から言えば、この選択肢は不自然ではありません。
なぜならこの時点で、マツリは自分が『律円果』であることを自覚したから。つまり、マツリから円果に戻ったのです。
だから彼はコンティニューしなかった。なぜなら、やり直してもキリオ(=友喜)の怪我は治らないと知っているから。
ちなみに円果が自分のことを思い出せず『マツリ』のままだった場合、彼は『はい』を選んでキリオを救いに行きます。
その場合はアナザーEND『リスタート』となりゲーム終了。
でも何度やり直したところで、恐らくキリオは救えないのでしょう。なぜならそういうストーリーだから。
結局のところ、この作品は何を伝えたいのか?
ミンナ生きてるよ。心があるヨ。
『ウーユリーフの処方箋』は円果のために作られたゲームであり、登場するキャラクターたちも架空の存在。けれど、この世界の全てが作り物ではありません。
キャラも設定もストーリーも作られた物ですが、みんな生きていて心があるのです。
マツリもキリオもンアウフも、確かに生きてそこに存在していた。作り物だけど、心だけは作り物じゃない。
それこそンアウフが4章で言ってましたよね。「ミンナ、生きてるヨ。心があるヨ」と。
「タレントもキャラクターもロボットも…ミンナ、ミンナ、消耗品なんかじゃナイヨ」
「ミンナ、生きてるヨ。心があるヨ」引用元:STAGE04-09
マツリが迷い込んだ『ウーユリーフの処方箋』というゲームは、キャラクターの心について描かれた脱出ゲームなのです。
この点についてはストーリー内で繰り返し強調されていました。
ロボットだけど生きてるの
みんな生きていて心がある。この作品を読み解くうえで、絶対に忘れてはいけない言葉です。
このゲームは何が言いたいのかと言えば、結局のところこれに尽きます。プログラムされた存在だけど、彼らは確かに生きていたのです。
それこそ『鉄屑の国のアリス』における『ロボットじゃない生きてるの。ロボットだけど生きてるの』という歌詞はそのまま彼らに当てはまります。
絶望も笑顔も血もハッピーエンドも全てシナリオ通りだとしても、そこには命の理があるんですよ。
ネタバレ感想|複雑なストーリーをどう解釈すべきか?
消費される側の心を描いた物語
『ウーユリーフの処方箋』のレビューや雑談掲示板を見ていて、どうしても気になった点がありました。というのも、マツリやキリオたちを『結局はただの作り物』と解釈している人が多いのです。
いやね、確かにそうですよ。みんな作り物で、ストーリーも何もかも開発者によってつくられたものです。マツリたちの絶望も笑顔も血もハッピーエンドも、全てシナリオ通り。
でもその解釈だと、『ウーユリーフの処方箋』というゲームがつまらなくなる。マツリたちの冒険を『ただの作り物』と捉えてしまったら、感動が薄くなる。
それはすごく勿体ないことだと思いました。だって、あの世界のキャラクターたちはみんな生きていて心がありますから。
なので管理人は、あの世界について『作り物だけど、そこで生きているキャラクターたちには確かに心があった』と解釈しています。
キリオの絶望もカナタの恐怖もミーハーの献身もシナリオどおりだけど、そこには確かに心があった。心は無法地帯だとマツリも言ってましたから。
ゲームの開発者だろうがシナリオの製作者だろうが、キャラクターの心だけは操れません。心だけは自由で、本人だけのものです。
それこそ4章でンアウフが言っていた「ミンナ、生きてるヨ。心があるヨ」というセリフが、このゲームの全てを表している気がします。
結局のところ、このゲームはそれを伝えたいのでしょう。
そして特ストの話になりますが、キャラクターに心があるからこそ妙なタイミングでバグが発生したのだと思っています。
あれは単なるバグじゃなくて、生みの親がキャラクターを制御できなかった結果。管理人はそう解釈しました。