『再婚承認を要求します』外伝63『もしラスタがナビエに送られたら(8)』のネタバレと感想です。今回で最終回となります。
ガリヌエラはソビエシュの子を妊娠しましたが、この先どうなるのでしょうか?ナビエはまたハインリと再婚するのでしょうか?
それでは最終話を見て行きましょう。
目次
ガリヌエラはソビエシュの子供を身ごもる
夫の浮気を知ったナビエは…
その瞬間、ナビエは自分がどんな表情をしたのかわかりませんでした。耳鳴りがし、意識が朦朧(もうろう)として何も考えられなかったのです。
そしてエルギ公爵と目が合い、正気に返った時。彼は緑色の瞳を大きく開けてナビエを見つめていて、また周囲の人々もじっとナビエを見ていました。
ナビエは苦労して表情管理をしますが、結局のところ何も言えませんでした。
ハインリとエルギの反応
エルギ公爵が南宮に到着すると、ハインリが駆け付けて軽く抱きしめました。彼は目的がある時だけ、こうして親切になるのです。
そして部屋で2人きりになると、ハインリは言いました。
「皇后陛下のメイドを誘惑してくれ。私があの方に近付けるように。わかっている。これは君の好きな状況ではない。でもさ…」
懸命に説得しようとするハインリ。しかしエルギ公爵は、そんな話をしている場合ではないと言って傲慢に笑います。
そしてガリヌエラが皇帝の子を妊娠したことを、ハインリにも伝えました。
・・・
話を聞き終えると、ハインリの表情はこわばります。
またこの時エルギは、顔を真っ白にしたナビエを思い浮かべて眉をしかめました。その姿に、誰かを重ねてしまったのです。
ソビエシュ&ガリヌエラの反応
微笑を浮かべて、安楽椅子に座るガリヌエラ。彼女はすでに宮殿の主のようで、皇帝の秘書たちはその光景に黙り込みます。
「妊娠したのですよ、陛下」
その言葉を聞いたソビエシュは、2つの感情に包まれます。そして秘書たちを部屋から追い出して2人きりになると、彼は額を手で覆いますが・・・
一方、ガリヌエラは平然と笑います。
「嬉しいでしょうね。子供を欲しがっていたのだから」
賢い彼女は、ソビエシュが後継者問題で悩んでいることを知っているようです。
彼は口をつぐみ、彼女をじっと見つめました。
噂は宮殿中に広がり、異様な雰囲気に包まれる
ラスタは殺意を覚える
噂はあっという間に宮殿に広まり、誰もがヒソヒソとその話をしました。そして現在ナビエの隣では、ラスタがこぶしを握りしめて歯ぎしりをしています。
「やはりあの時、殺しておくべきだった…」
怖いことを言うラスタ。しかしナビエはよく聞こえず、ソファの背にもたれて目を閉じながら彼の事を考えました。
(ソビエシュ、ソビエシュ、ソビエシュ…あなたは一体…)
するとその時。
怒りのあまり庭に出ていたローラが、小さな箱を持って帰って来ます。その箱は送り主が不明で、部屋の前に置かれていたそう。
ナビエは不思議に思いながら箱を開けてみると、中には小さな薬瓶とカードが入っていました。
『遅い誕生日プレゼント。愛の妙薬』
ソビエシュは2択を迫られる
ソビエシュの部屋も普通の雰囲気ではなく、彼は2本も立て続けに酒瓶を開けました。その隣ではカール侯爵が心配しながら、本当にガリヌエラは妊娠したのでしょうかと尋ねますが・・・
その問いに、ソビエシュは事実だろうと答えました。
「家柄がしっかりしているのに、そんな嘘をつけないだろう。家門のためにも」
そして青白い顔でかたまるナビエを思い出し、彼はひたすら酒を飲み続けました。
激怒するラスタと、ガリヌエラの本音
ラスタVSガリヌエラ
ラスタが東宮に行くと、偶然にもガリヌエラと再会します。ラスタは顔をしかめると、彼女はからかいました。
「もうすぐ私が皇后になるはずよ。事前にひれ伏した方がいいんじゃない?そうすれば以前のことは見過ごしてあげる」
その言葉にカッとなるラスタ。しかしガリヌエラの護衛に突き飛ばされました。
するとそこに、偶然ナビエが通ります。
ナビエが見たのは、人影のないところで倒れるラスタと目の前に立つガリヌエラ。何事かと聞くと、彼女は「この下女が私に無礼なことを言うので」と謝罪をしますが・・・
ナビエは相手にせず、ぶっきらぼうに返事だけしてラスタを連れて帰ろうとします。するとガリヌエラは突然、眉をひそめて抗議しました。
「私は音楽家として生きたかったのです。それなのに皇帝陛下のために側室になってしまいました。存じております。皇后陛下も傷ついたのでしょう。けれど、この状況で最も傷ついたのは私です」
だから側室を見るような目で見ないでください…と、自分が正当であるかのように主張するガリヌエラ。
すると話が終わるや否や、ラスタはチンピラのような言葉でガリヌエラを罵倒しました。
そして彼女がどなり散らした後、ガリヌエラは沈んだ声で「あの侍女を今すぐ罰するべきです」と言いますが・・・
ナビエにとって、ラスタの古代語のような悪口は痛快でした。だから何も聞いていないことにして、ラスタを連れてその場を去りました。
ラスタの決断
部屋に戻ったあと、ナビエはラスタに言い聞かせます。
私のために怒ってくれるのは嬉しいけれど、絶対に人前であんなことを言ってはいけない。あなたが私のせいで怪我をしたら、私は嬉しくないわ…と。
するとラスタはしぶしぶ頷き、何かを言いたそうにモゾモゾしてから宣言しました。
「決めました。北王国には行きません。イエミル伯爵はいい人だけど、ラスタはナビエ様のそばに残りたいです」
なぜこのタイミングで、急にその結論を下したのか。ナビエは不思議に思いますが、とにかくラスタ本人は難しい決断を下したように見えます。
そして彼女は涙をぽろぽろ流しながら、言葉をつづけました。
「ラスタは陛下に付き添います。陛下と西王国に行くつもりです」
なぜ西王国の話になるのか、なぜ悲しそうに泣くのか。ナビエは訳が分かりません。
しかしそう思いながらも、ラスタがあまりに真剣なのでナビエは頷きます。そしてラスタの手を握ってあげると、彼女はさらに泣いて「必ず連れて行ってくださいね」と繰り返しました。
大神官視点|赤い幽霊を鎮めるため、塔で祈祷する
大神官と赤い幽霊
大神官はいつもより早めに祈祷を終えると、弟子の神官とともに暗い塔の階段を降ります。今までいくら祈っても無駄でしたが、もう“赤い幽霊”は現れないでしょう。
すると途中、神官は聞きました。
「ところで大神官。ラスタ様の幽霊ですが、なぜ落ち着くまでに何年も時間がかかったのですか? 幽霊は自分のことだけ考えて夢を見るのではないのですか?」
大神官はそうじゃないから長引いたんだ…と返事をしますが、詳しくは教えてくれません。すると神官は悔しそうに呟きながらも、別の話を切り出します。
「数日後にはラルス皇太子様の戴冠式なので、見ていきましょうか?」
しかし大神官は忙しいので、戴冠式には行けない!と神官を怒鳴りつけます。
するとその時「あら残念ね」と塔の出口付近から声が聞こえます。そこには背の高い金髪の女性――ラリが腕を組んで立っていました。
「おじいさん、本当に見に来ないの?私の戴冠式」
大神官は先ほど「幽霊の幻想」を共有していたせいか、ナビエの顔でハインリのように行動するラリを異質に感じます。
また大神官は、ラリの傍に立つ男性を見て黙礼しました。彼の実体が龍だと知っているからです。
しかし一方で、神官は修行不足のため彼がどれほど恐ろしく偉大なのかわからない様子。そのため大神官は、なぜこんな子を弟子にしたのかと自分を責めますがーー
ラリの後ろにいる女性騎士を見て、目を見開きました。
幻想の中でずっと見ていた顔なので、大神官はやたら涙が出てきて目元を拭います。そしてラリに別れを告げると、忙しなくその場を立ち去りました。
そして新しい世代が始まる
大神官が本当に帰ってしまったので、残されたラリは寂しくなってぶつぶつ呟きます。
するとヨンヨンが傍で笑い、ラリの腰を掴みながら「あの人間がそばにいたらいいのかい?持って運んであげようか」と言いますが・・・
モテがきまり悪そうに見つめるので、ラリはヨンヨンのわき腹を突いて止めます。そして3人は会話をしながら、東宮へと歩いて行きました。
・・・
遠くで立ち止まっていた大神官は、騒がしい声が聞こえなくなると再び歩きます。背後からは暖かい春風が吹き、新しい世代が始まろうとしていました。
【感想】再婚承認を要求します最終回!作者様お疲れさまでした!
最終回の感想
『もしラスタがナビエに送られたら』は今回で終了です。全63話。外伝としては相当な長さのストーリーですが、作者様がキレイに書き切ってくださいました。
【ネタバレ解説】外伝63のわかりにくい部分を説明します
解説①外伝63のその後について
もしラスタがナビエに送られたら、ラスタは誠心誠意ナビエに仕えます。けれどソビエシュは結局浮気をし、側室を迎えました。
これが『IF』の結末ですね。ラスタが側室にならなくてもソビエシュの運命は変わりません。違う選択肢を選んだところで行きつく先は同じなのです。
『IF』のストーリーは途中までしか描かれていませんが、その後ナビエはきっと、本編と同じように西王国に行ってハインリと結婚して双子を授かたのでしょう。
多分、下のようなストーリーになるはずです。
- ソビエシュは後継者欲しさにガリヌエラを皇后にする。つまりナビエは本編と同じく廃妃になる。
- ナビエはハインリと再婚し、共に西王国へ(もちろんラスタも同行)
- 多分②の段階で、エルギ公爵もいろいろ手伝ってくれる
- ラリとカイが生まれてハッピーエンド。多分ラスタは全力で双子のお世話をする
結局のところ、ナビエの運命の相手はハインリ。IFでもそれは変わりません。
多分ナビエが西王国に到着した後は、本編とほぼ同じように過ごすはずです。IFとの違いは、そこにラスタがいる点くらいでしょうか?
解説②”IF”はラスタの幻想だった
これまでのIFストーリーは、全てラスタの幽霊が見ていた幻想です。
大神官はラスタの幽霊を鎮めるために祈祷し続けていて、その度にラスタと幻想を共有していた――つまり、ラスタの夢を見せられていたようです。
なおラスタが見ていたのは、幻想であり妄想ではありません。ソビエシュが見ていた幻想と同じように、現実とリンクしているはずです。
つまりラスタの幽霊が見ていた幻想は、別の世界線の出来事ーーつまり実際にあり得た未来なのでしょう。
あくまでIFであり、ラスタが勝手に妄想したものでは無い。管理人はそう解釈しました。
続編『ソビエシュの回帰を読んだところ、管理人の解釈で合っているようです。興味がある人はリンク先に1話目の概要をまとめてたので読んでみて下さいね。
予想|東大帝国は今後、絶対に苦労する
『再婚承認を要求します』のIFを全体的に見ると、小さな運命は変えられるけど大きな運命は変えられないという印象を受けます。
その理屈でいくと、ラリが東大帝国を継承する運命も変わらないのかなと思います。そして大筋が同じなら、ソビエシュは当面幸せになれないし本編と同じように狂いそうな気がします。
そもそもガリヌエラは、ナビエほど上手く皇后の役割を果たせないでしょう。いくら賢いとはいえ、普通の女の子ですから。そうなると世論でナビエと比較され、精神的にダメージを負うはずです。
本編でガリヌエラは「この状況で最も傷ついたのは私です」と言っていましたが、この言葉は今後、事実になるのでしょう。
どっちみち東大帝国々は、ナビエがいなくなったせいで苦労するはずです。
『もしラスタがナビエに送られたら』キャラ別の感想
『もしラスタがナビエに送られたら』の感想をキャラ別に書いたところ、ドン引きするほど長くなったので下の記事にまとめました。
内容としては、IFの世界線におけるラスタやエルギ公爵について管理人がひたすら考察する内容です。
初めまして!いつも更新楽しみにしています。
今回、「ラスタの妄想ではなく幻想」というコメントにとても感銘を受けて書き込ませていただきました。
たしかに妄想ならもっとラスタにとって都合のいい展開になっているだろうなとすごく納得しました。
同僚からも不器用だけど一生懸命頑張ってるからと可愛がられたり、恋が芽生えそうな相手もナビエが移住するであろう西王国の貴族だったりというご都合主義な要素が排除されていて現実的な流れですよね。
純粋に好きになってくれてしかも貴族の嫁になれるチャンスだったけど選んだらナビエの元からは離れることになる。ナビエに大きな障害が現れたタイミングと重なったせいではありますけど、この先も傍に付き従うことを望んだIF世界のラスタを見ていると根本的に純粋で情熱的なんだなと改めて思いました。
>くろこさん
コメントありがとうございます!
「感銘を受けた」と言われると照れますが嬉しいです。ありがとうございます。
そしておっしゃる通り、ラスタは純粋なのでしょうね。環境次第で白くも黒くもなれる子。IFでは白ラスタになった印象です。
更新ありがとうございます。
最終回を読んで胸が一杯ですが、個々の感想は、管理人様がお書きになられてから書くことにいたします。
このifはラスタの妄想に形を借りた本編の答え合わせのような気がします。
ラスタは誰かが仕掛けたハニートラップか
⇒間違い ただ逃げてきただけ
ハインリがエルギに頼んだ内容
⇒ナビエ様を苦しめるようなことは一切頼んで無い などなどなど
そして個人の感想ですが、作者様はここまでソビエシュにどんどん同情を集めるようにしていましたが、このifでやはり悪いのはソビエシュだったと、ある意味えげつない程に清々しく勧善懲悪の結末でナビエ様の進んだ道は正解だったと皆に知らしめたのではと思います。
読者は作者様の手のひらの上でいい意味で踊らされていたって感じで。
これでやっとスッキリとナビエ様が再婚して幸せになって良かった、ハインリが一途な愛を貫けて良かった、凄い作品だったと声に出せます。
本当はハインリが東西統一してもいいかなぐらい思っていたのですが、ナビエ様と、東大帝国に肩を並べる事を約束していたハインリとマッケナの血を分けた子達が統治する事に意義があるんだろうと思いました。
(まだラリとヨンヨンは結婚してはいませんがしますよね)
個人別の感想も楽しみにしております。
>マリさんへ
いつもコメントありがとうございます。
IFは本編の答え合わせ。これは管理人も感じました。ソビエシュが全て悪いワケでは無いけれど、引き金を引いたのは彼なんですよね。IFではそれが明確になりました。
だからこそ本編できつい罰を受けて、外伝では自分で自分を罰して。でもその罰は全て妥当で・・・と、全てがキレイに繋がった印象です。
改めて、この作品は本当にすごいなと思わされます。
あとラリとヨンヨンは多分、遠くない未来に結婚しそうですよね。
更新ありがとうございます。
遂に外伝も完結してしまいましたね。
只々凄かった!
管理人様が仰る『小さな運命は変えられるけど、大きな運命は変えられない。』には、云々と大きく頷きました。
ラスタの幻想で、ナビエを護り側で生きていくという決断をしてそれをナビエも受け入れてくれた。
そして起こりえたもう一つの未来の如く、
ラリを護り側で生きていく決断をしてそれを実現した娘モテ(グローリーエム)。
ラスタの魂が納得するに充分だったのでしょう。
ラスタの救済とはこうであったのか、と胸がいっぱいになりました。
あゝ再婚ロスになりそうです。
続・外伝を、私も強く希望します。
作者様にこの想い届きますように。
そして管理人様のキャラ別の感想とご考察、楽しみにしております。特にエルギ。
>とんすけさん
いつもコメントありがとうございます!
ラスタが上手いこと救済されて全てがキレイに繋がって、本当に「只々凄かった」の一言に尽きますよね。作者様の手腕がすばらしいです。